柴田優呼@academic journalism

アカデミック・ジャーナリストの柴田優呼が、時事問題について、エッセイを書きます。

米朝会談、トランプ等身大外交の行き着く先は

二転三転したあげく、米朝会談が明日、6月12日に開かれるが、いまだにトランプ大統領金正恩委員長の間で何が話されるのか、米国メディアも外交専門家も、誰もわからない。

ウォール・ストリート・ジャーナルは、ポンペオ国務長官NHKのインタビューをもとに、共同文書が発表されたら、会談が成功だったということだ、との発言を報道する始末。

 しかし、一体会談で何が話されたら、成功となるのかはいまだに不明。

 わからない理由は簡単だ。

それは、通常の国家間外交のように、時間をかけて下から積み上げて交渉していないから。

交渉に携わる担当者の層も薄く、時間も短い。

つまりは、トランプ大統領自身の外交交渉に臨む時の姿勢を反映している。

1、準備する気がない

2、専門家が嫌い

訪米した安倍首相と共に6月7日に開かれた共同記者会見で、トランプ大統領は、米朝会談に際し準備不足、との懸念が持ち上がる中で、「大事なのは会談に臨む姿勢であって、会談の準備ではない」と、しゃあしゃあと言ってのけた。

(完全であろうがなかろうが) 北朝鮮の非核化をするにはどんな手続きが必要か、知っておく必要がある。だがトランプ大統領はちゃんと準備をしていないし、準備する気もないことが、これでわかった。

対する金委員長は、そうした内容は技術的なことも含め、全部頭に入っていると言われる。例え非核化のための具体的な手順の話をしたところで、金委員長が何を言っているのか、トランプ大統領にはよく理解できないだろう。

 トランプ大統領が、回りが自分にNOと言うのに疲れた、と言い始めたのが今春。

彼に意見していたティラーソン前国務長官に、ツイッターでクビを言い渡したのが3月上旬だった。その頃から、トランプ氏の回りには、イエスマンしかいなくなった、と言われる。

もともと頭脳流出がひどく、就任1年後の今年初めには、34%が辞任、解雇、または配置転換となり、その数は過去40年で最悪となっていた (同時期、レーガン大統領は17%、クリントン大統領11%、オバマ大統領9%)。

専門家嫌いで、他人の言うことを聞かないトランプ大統領

だから、外交交渉は自分が直接、首脳と会ってやるしかない。

交渉の内容、そしてその成果も、彼が理解できる範囲のもの、等身大の彼の考えが反映されたものとなる。

だが、もとはと言えば、これらはアメリカ国民が望んだものの結果だ。

ホワイトハウスペンタゴンウォール・ストリートシリコンバレーが、国民の頭越しに政策を決めていくのを、アメリカ人は嫌がった。

民主党共和党、二大政党の枠組の中で、ブッシュ王朝やクリントン王朝が政権交代するのではなく、何か型破りなもの、アンチ・エスタブリッシュメントで、従来のシステムを壊してくれる者の登場を望んだのだ。

もう「エキスパート」はうんざりだ、という思い。

そして、政治にど素人のトランプ氏を選んだ。

何か新しいもの、これまでと全く違う何かが生まれるのではないか、と期待する気持ちが、その裏にあったはずだ。

自民党をぶっ壊す、と言って登場した小泉元首相を彷彿とさせる。

そしてトランプ大統領は今、アメリカをぶっ壊し、NATOをぶっ壊し、G7をぶっ壊し (←今ここ)、朝鮮半島の政治状況を明日、ぶっ壊そうとするところ、と言ったところか。

 そうやってトランプ大統領が、アメリカの国益を毀損していっても、アメリカという国家は、それを甘受していくのだろうか。

© 柴田優呼

f:id:ys98:20180611222412j:plain

Pexels