柴田優呼 @ academic journalism

アカデミック・ジャーナリストの柴田優呼が、時事問題などについて語ります。

アートを観て、「良かった」以外の感想を言うのは、難しかったか

日本の名だたるダンス・アーティストによる「パフォーミングアーツ・セレクション 2022」を2022年10月7日、長野県松本市のまつもと市民芸術館実験劇場で観た。詳しくはこちら: https://www.mpac.jp/event/38068/ まつもと市民芸術館 ひょんなことで、わずか2…

男性を守り、女性を貧困に追いやる日本というシステム

最近、以下のツイートがけっこう反響を呼んだので、その際書き込めなかったことも加えてまとめておこう。 日本人男性は職場で、英米などの男性ほど、優秀な女性や外国人との競争にさらされず、守られている。似た経歴の日本人男性同士という狭い中での競争が…

『おらおらでひとりいぐも』が示す「高齢女性もの」という新ジャンル

映画化された『おらおらでひとりいぐも』(沖田修一監督、2020年) を見た。こんな話だったっけと思った。若竹千佐子氏の原作 (河出文庫、2020年) をもう一度読み直した。やはり違った。 この小説は老いと孤独についての話で、御年74歳の日高桃子さんの独居生…

チャームと極端と運命論の『本当に君は総理大臣になれないのか』

小川淳也、中原一歩『本当に君は総理大臣になれないのか』(講談社現代新書、2021年) を読んだ。これで最近出た「小川淳也本」はあらかた制覇したことになる。 対談形式の和田靜香、小川淳也 (取材協力)『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会…

政治家を自分のために使うススメ

大井赤亥 (あかい) 『武器としての政治思想——リベラル・左派ポピュリズム・公正なグローバリズム』(青土社、2021年)を読んだ。野党の衆院選立候補予定者の書いた本だが、政治的スローガンや政策のてんこもりではなく、90年代以降 (つまり冷戦崩壊以降、日本…

佐藤愛子『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』読後の寂寥

佐藤愛子はやはり佐藤愛子。余韻なんてわざとらしい。もったいぶるのはしゃらくさい。もっと引き延ばせそうな話も、えいやっと断ち切って涼しい顔。自身の執筆人生まで、最後は一刀両断に………といった内容を読後感として書こうとした。 でも本書『九十八歳。…

人生訓にもなる『こんな政権なら乗れる』

政権交代に必要なこと、それは野党がちゃんと政権を運営してくれるという信頼感を、有権者が持てるかどうか。中島岳志・保坂展人『こんな政権なら乗れる』(朝日新書、2021年) はそう説く。 では、その政権運営能力とは何か。それはプラクティカル・ナレッジ …

『なぜ君は総理大臣になれないのか』は教育映画だった

書籍化された、大島新+『なぜ君』取材班『なぜ君は総理大臣になれないのか』(日本評論社、2021年) を読んだ。同名のドキュメンタリー映画の全文書き起こしと、大島新監督の対談や複数の解説記事がついている本だ。 実はまだ映画は、見ていない。映像が伝え…

「やめる」権力、トランプが体現する民主主義の危機

北朝鮮が履行する非核化の行程も明らかでなく、同盟国の日韓との事前協議もないまま、寝耳に水で、米韓軍事演習中止を決めたトランプ大統領。就任以来、パリ協定離脱、NATOの疑問視、エルサレムへの米大使館移転、鉄鋼アルミ関税発動、イラン核合意破棄、G7…

米朝会談、トランプ等身大外交の行き着く先は

二転三転したあげく、米朝会談が明日、6月12日に開かれるが、いまだにトランプ大統領と金正恩委員長の間で何が話されるのか、米国メディアも外交専門家も、誰もわからない。 ウォール・ストリート・ジャーナルは、ポンペオ国務長官のNHKのインタビューをもと…

中国が拉致問題への協力に同意したのは前進

既に、とうの昔の出来事のように思えるが、今年4月17日安倍晋三首相が訪米し、トランプ大統領と会談した。 どうやってトランプ氏に、拉致問題を米朝会談で取り上げてもらうか、が会談の焦点の一つのように言われていた。 つまり、拉致問題はトランプ頼み。 …

福田財務省事務次官のセクハラ発言とMeToo運動

辞任してなお、福田淳一財務省事務次官は、テレビ朝日の女性記者に対するセクハラを否定している。公表された会話の録音は「一部でしかない」と主張する。 だが一部しか明らかになっていなくても、公表部分を分析するだけでも、たくさんのことがわかる。 今…